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Argyll CMSで環境光を測定する −演色評価数(Ra)や色温度も計れる! with ColorMunki Photo

dispcalGUIの使い方を紹介しようと考えていたのですが、
説明するとなると、非常に専門的(色彩学など)で難しいことが分かってきたので、
Argyll CMSとdispcalGUIを分かる範囲で少しずつ紹介していくことにしました。
(操作そのものは非常に簡単)


今回は初めてArgyll CMSを使ってみました。
Argyll CMSキャリブレーション関係のことならなんでもでき過ぎるが故に
取っ付きにくいソフトです。


今のところ詳しい使い方は不明なので、公式のドキュメントを読みながら使うことにしました。
Argyll Documentation Top


まずは、モニターとプリントした写真の色合わせをする際に必要となる
"プリント観察条件"を測定します。
"プリント観察条件"を色温度5000k、照明レベル500〜600ルクス、演色AAAになるよう
に環境を整備する(大日本印刷株式会社・デジタルカメラ入稿ガイド Ver.2などを参照)
のですが、現在の環境はどのような環境光であるか、Argyll CMSを使って調べてみます。


Argyll CMSで環境光を測定する方法

1. 検索欄にcmdと入れ、コマンドプロンプトを選択、起動する。
画面はWindows8ですが、XP, Vista, Windows7でも同様の操作です。


2. C:\Users\ユーザーネーム(半角英数字)>
と表示されるので、

cd c:\argyll_v1.4.0\bin

と入力。

これでc:\argyll_v1.4.0\binに移動しました。


コマンドプロンプトで動くアプリケーションソフトは、ユーザーネームは
半角英数字が望ましいです。原因不明で動かない場合は、ユーザーネームを
半角英数字に変更してみてください。この場合のユーザーネームとはWindowsのOSに関する
USERNAMEのことで、起動時にログオン・ログオフするときに選択する名前のことです。
OSによって書き換え方法が違うので、もし変更する場合はググってみてください。


ユーザーネームが全角の場合にArgyll CMSが止まる原因は、ユーザーネームの中にあるフォルダを
参照するからのようです。

Working directory:
 c:\
  users\
   ユーザーネーム(半角)\
    appdata\
     local\
      temp\
       dispcalGUI-e6jarm\

cdはchange directoryの略で、ディレクトリを移動するときに使います。

cd c:\argyll_v1.4.0\bin

でC:ドライブの\argyll_v1.4.0フォルダの中のbinフォルダに移動するように指定します。


以下のblog記事と同じインストール方法であれば、binフォルダ(ディレクトリ)に移動できます。
Argyll CMS & dispcalGUI 簡単インストール with ColorMunki Photo測定器 - JJsの日記
binフォルダを移動させている場合は、そのディレクトリを指定してください。


※ウインドウの外枠の色がコロコロ変わっているのはWindows8の壁紙の
「シャッフル」機能によるものです。今回の記事内容に関連性は全くないです。


3. 今回は環境光を測定するので、spotread.exeを-aオプション(flag)をつけて起動させます。


4. 環境光を測定する前に、ColorMunki Photoの測定器をキャリブレーションするので、
キャリブレーション用の位置に回転させて、何かキーを押す。


この斜め下の位置に合わせて、何かキーを押す。

環境光の測定なので、カバーは外しておく。
Calibration completeと表示されれば、測定器のキャリブレーションは完了。


FWA compensationについては以下を参照。
Fluorescent Whitener Additive Compensation
UVフィルターがないと、蛍光増白紙を測定した場合に補正が必要になる。
ColorMunki PhotoはUVフィルター付きで、UVフィルターは外せないので、FWA補正はいらない。
エンターキーを押せば環境光の測定が始まる。


5. ColorMunki Photoの測定器のダイヤル位置を上に持ってきてから
エンターキーを押す。


6. 測定結果が表示される。


測定内容

上の画像は、5500k Ra95の手元ライトスタンド用蛍光灯である、FPL27ANXを
一般的な三波長蛍光灯(昼光色)と併用した状態で測定した結果です。
三菱 FPL27ANX レビュー 色評価用蛍光灯に限りなく近い、高演色なツイン蛍光灯で撮影比較 - JJsの日記


表示されている内容は、順に
XYZ三刺激値、D50でのLab(L*a*b*)の値、
環境光(Lux)、CCT(correlated color temperature)相関色温度
Suggested EV @ISO 100 入射光方式の露出計でのEV値?
Closest Plankian temperature=黒体放射軌跡上に最も近似した色温度(デルタE値:どれだけ黒体放射軌跡から離れているか)
Closest Daylight temprature=CIE昼光に最も近似した色温度
Color Rendering Index (Ra)=演色評価数


上記はこの本などを元に調べてみました。


測定内容結果の中で、必要な値として、環境光、相関色温度、演色評価数(Ra)の3点を押さえるといいでしょう。
環境光(Lux)が明るすぎる場合は、蛍光スタンドと写真の距離を取って、観察します。
今回は600Luxちょっとなのでちょうどよかったです。
相関色温度と演色評価数は、三波長蛍光灯とのMIX光なので、それぞれカタログスペックよりも下がっています。


このように写真を観察するときの環境光が把握できたので、モニターとプリントの色が
合わない原因のひとつを探ることができました。


おまけ sRGB標準ディスプレイのIEC規格International Electrotechnical Commission:IEC

モニターとプリンターの色が合わない原因は、モニターやプリンターのキャリブレーションカラーマネジメント
大事ですが、環境光が整備されていないと、色が合わないです。


sRGBの規格

モニターの表示条件
白色点 D65
CRT白輝度 80cd/m2
CRTガンマ 2.2
ブラックオフセット 0.055


モニタ観察条件
背景 モニタ輝度レベルの20%
周囲照明レベル 64Lux
周囲白色点 D50


プリント観察条件
照明レベル 600Lux
白色点 D50


上記sRGB規格のソース: 小野 文孝 カラーマネジメント技術 東京電機大学出版局 (2008/07) 18ページ


ざっくり言って、Argyll CMSで計った環境光、相関色温度
それぞれ600ルクス、5000k前後でプリントしたものを見ればいいわけですね。
この観察条件の明るさが変わると、暗部の沈み込み方が違うのはもちろん、色相だって
変わって見えてしまうこともあります